寺田 良輝という傀儡

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寺田 良輝という傀儡

桜宮信者の1人

この作品において一番の異分子を挙げるなら、それは『寺田 良輝』こと『ウェルテル』だろう。彼の存在はクラスにおいても異質であり、その態度や行動によって生徒たちを苛つかせるまでに至ってしまう。また事実上、下村家の惨劇に関して言えばウェルテルのしつこすぎる家庭訪問によって2人が追い込まれた事実は傍から見れば取れる。実際、事件の後には美月によって糾弾されるほどに、愚かな行動を取っていたことがよく分かる。現実にいれば、まず間違いなく問題教師としてあてがわれる存在だ。

しかし彼にはある点があった、それは彼自身が桜宮 正義という存在に対して強い憧れを抱く『桜宮信者』だということ。このこともクラスでは森口の存在を思い出させるものとなった。桜宮の信者ということで、ウェルテルは彼に対して絶対的な敬意を誇っており、幼少期には彼がしていた不良行為を実際に模倣するなど典型的な夢想家であるという。そんな彼にとって、桜宮の死は大きかった。自分の生き方を指針してくれた人の葬式に訪れた際、そこでウェルテルはある人物と接触する。

それが桜宮と実質夫婦の関係にあった森口、彼女は寺田 良輝という傀儡を手に入れることで修哉と直樹、そしてクラスで何が起きているのかを情報を知ろうとする手段を手に入れる。ウェルテルは最後まで自分が利用されていたことに気づくことはなかった。

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森口の指示の元で

その後担当するクラスでどうにも上手くいかないことがあれば、度々森口に相談をしていた。そして森口は自身としての言葉ではなく、桜宮ならこうするという言葉を添えてウェルテルへのアドバイスを送っていた。当然それはアドバイスではない、修哉には効果は働かなかったものの、直樹と優子の2人をどん底にまで追い込む事に成功した。

実際、ウェルテルへがこれまで行ってきた行動も全て森口が桜宮ならこうする、とそそのかしてやらせていたといってもいい。具体的な例としてあげると、

下村家へ毎週訪れて、熱意を訴える

時に拒否反応が出ても、決して引かないように訴え続ける

といった具合にウェルテルを扇動して、彼に自分の行動は桜宮が認めた『正しい行い』だと誤認させることに成功する。結果、ウェルテルが下村親子を無自覚に追い込み続け、最後に直樹が母を殺す一端を創りだす原因を生み出してしまった。自分のしたことは間違っていない、桜宮が正しいと思ったことをしたまでだと信じる彼は、もう自分の意志の元で行動することはなかった。

何が起きているのかを知らないまま

二年からの担任ということで、森口の告白を知らないためクラスで何が起きているのかを理解していないというのも大きい。それ故、クラスで修哉に対するいじめがあったにも関わらず、それにも気づくことはなかった。ウェルテルと自称する寺田 良輝という教師には大きな欠点が存在していた。それは生徒1人1人の行動に対して鈍いというもので、また悪い意味で全員を平等に扱おうとしたことにより、クラスの関係をさらに悪化させる事となる。これは森口ではなく、彼自身の問題だ、

その後森口からいじめがあるかも知れないと相談すると、ここで森口は彼にある提案をする。それは誰かが告発したと捏造して問題喚起をしてみてはどうだろうかというものだった。告発があったという事実が発生し、クラスでは犯人探しが始まるなど事態は悪化に悪化を重ねていってしまう。この点についてもウェルテルという存在が教師として至らないのかを顕著に示している。

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休職に追い込まれる

クラスで何が起きているのかを知らず、事態をかき回す寺田 良輝の存在を一番鬱陶しいものとしてみていたのは、ひたすら下村家の付き添いに付き合い続けていた美月だった。警察の事情聴取において寺田の愚行を糾弾したことにより、その責任を負う形で寺田は休業にまで追い込まれてしまう。

ただそれも森口にとってはどうでもいいことだった。唯一言えば、彼の行動で下村 直樹への復讐が出来たという事実、これだけで満足したといえるだろう。いわば森口にすれば寺田は使い捨ての駒であり、彼がどうなろうと知ったことではなかった。