第2章から見える姿

第2章から見える姿

表と裏、渦巻く葛藤

森口の告白、そしてそんな衝撃な内容を告げて学校を去った元教師、事実を自分たちしか知らない生徒たちはどうするべきなのかと思案することとなる。それもそうだ、何せ警察でも知らない事件の真相、そして真犯人が自分たちの中にいて、彼らによって彼女の娘は不条理にも殺されてしまった。それはまだ精神的に未熟な生徒たちでも分かる、悪という明確な存在が自分たちの中にいるという異物感。これらの状況によって何が起こるか、それはたやすく想像できるだろう。リアルでもバーチャルでも、それは共通している。自分の周囲にかつて犯罪者がいたとなれば態度を激変してしまうものだ。例え世間的に見れば更生しているとみなされても、いつその衝動に襲われて自分が被害者になるかわからないからだ。

最近だと、かつて罪もない子どもたちを傷つけ、殺害した元未成年の少年が発表した書籍が遺族たちに対して配慮されていないまま世に出されるという問題作も登場している。そこにあるのは犯罪者視点で語られる独善的な内容だ、正義でもあり、悪でもある、しかし自分が決して間違っているわけではないと訴えている文面には吐き気を要した、そういう人もいるはずだ。

この章ではそんな、自分たちの同級生が罪を問われることもなく、世間に取り沙汰されることもなく、ノウノウと生きているという事実、そして彼ら2人に対して復讐をした森口、残された生徒たちは自分たちの中で思いつめる葛藤と本音によって突き動かされていく。

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第二章の見どころとして

衝撃の始まりとなった一章に続いて、二章で繰り広げられるのは生徒たちによる人殺しをした少年たちによる壮絶ないじめだった。その内片方は自分は悪くないとばかりに平然と学校に来ているが、もう一人の実行犯は終業式以降学校へ登校することはなかった。そんなクラスに新任教師として登場したのが、森口の元婚約者でもある桜宮 正義に対して絶対的な信仰を仰いでいるウェルテルこと『吉田 良輝』が担当教諭として着任する。

しかし彼の登場はクラスにいた誰をも狂気へと走らせることとなる。そして森口の告白によってクラス全体が壊れ始めている状況を、今作におけるキーパーソンとなっている『北原 美月』が彼女に対して送った手紙という文面で物語が始まっていきます。ではそんな第二章のあらすじから読み解いてみよう。

あらすじ

森口の告白後、クラスにある一通のメールが着信する。それは全員に行き渡っていたが、そこに記されていたのは『森口の告白を外部に漏らしたものは‘少年C'とする』というものだった。それは暗に事実を外にバラせばどうなるかという脅迫めいたものだった。これにより生徒たちは誰に話をすること無く、またクラスにあたかも存在している人殺したちへの陰湿ないじめを開始していく。

新学年となったクラスには、新しく『寺田 良輝』という新任教師が着任してその挨拶をする。しかしそこで彼が語ったのは、誰もが笑えない『桜宮 正義』に対して熱烈なファンだという真っ直ぐで何も知らないがゆえに醸し出す空気が、クラス全体を重たくしていく。絵に描いたような新任教師の登場、それは彼らが殺人を行った少年Aこと、『渡辺 修哉』へのいじめを苛烈にしていった。また終業式以降、自宅の自室に閉じこもってしまった少年Bである『下村 直樹』を皆で励まして来れるようにしようと提案する。直樹を励まそうとして寺田こと、ウェルテルは美月とともに彼の自宅を訪ねて彼の母である『下村 優子』を介して説得を試みた。

しかし美月はそれが状況を悪化させているだけだと理解してウェルテルへ異論を唱えても、彼は聞く耳を持たない。また毎週のように訪れては、自分の息子を明確に助けるわけでもない、綺麗事だけを言うウェルテルに母優子も次第に追い詰められていく。それは直樹もそうだった、自分がHIVに感染してしまったかもしれないこと、人を殺してしまったという事実をまざまざと突きつけられてしまったこと、幼い精神が破綻するまで時間はかからなかった。

やがて歯車は音を大きく立てて展開する、それは最悪であり、最低であり、そして予想されていた通りの結末へと誘われていく。

ウェルテルの存在

この章で一番注視したいのは、異彩を放つウェルテルこと寺田良輝という教師の存在だ。彼が信奉する桜宮 正義という存在、それは良いとしてもまるで二次元の世界から飛び出たような熱血漢に誰もが圧倒された。ただ誰もがすぐに気づく、この教師は綺麗事しか言わなくて何も分かっていないということを。事実、ウェルテルは修哉に対するいじめが行われていることも気づかずに過ごしていた。なお気に対する行動も、逆に彼の壊れかけた精神を更に追い詰めていくだけとも知らず、母である優子もそんななにもしないウェルテルを疎ましく、そして鬱陶しい存在と認識する。

彼の存在は映画を視聴している人にしても、異物という印象を与えるに相応しいくらい、滑稽な存在だった。そしてその滑稽さ故に生徒たちは扇動され、美月は1人狂気が交差するクラスの状況を1人離れたところから傍観していた。

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復讐の第一段階

森口が仕掛けた復讐、その段階として二章はまだ始まったばかりだった。彼らの行動によって少年2人を追い詰め、そして誰に事実を告げられない生徒たちに寄る自己欺瞞に満ちた断罪といういじめが発生すること、それを全て考慮していたと分析できる。やがてその復讐は一つの結果を生み出す、それは少年Bである直樹が起こしたもので、彼が自分という存在を完全に喪失する事にもなってしまった。